折る、切る、貼る、縫うなどの手先の活動
- 折る、切る、貼る、縫うなどの手先の活動
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モンテッソーリが主張した事の特徴の一つは、
「手」を使う必要性を強調したことです。
「手は人間に与えられた莫大な宝ともいうべき器官」だと言っており、
子どもを研究するには「手の発達」および「平衡と歩行の発達」の
二つを追っていく必要があるとも唱えています。
「手の能力の発達は、人間の知能の発達と結びついている」と考えていて、
子どもがその心を構成する時に必要とするものを、
自分の周りの環境から掴み取ろうとし始めるときには、
その活動を促進させる物を身辺に見つけることができるように
してやらなければならないというのです。
子どもの手の活動を無造作に制限したり禁止したりする事は発育を抑圧する事になり、
子どもに永久に黙っていなさいと言い渡す事になるとモンテッソーリは言っています。
『幼児の秘密】という著書に
「幼児期の手の活動は、人間の労働の片言ともいえるのですが、
幼児に活動を促す品物が必要になります。
それがあれば、子どもは、大人が子どもに期待するすべてのものを、
はるかに超える作業を遂げるのが見られます。
また、ごく小さい子どもでも、正しく整えられた環境さえあれば、
早熟な几帳面や、熟練で大人を唖然とさせるような
作業を成し遂げる事も珍しくありません」
と記しています。
残念ながら、現代の生活では、大人でも
「のこぎりで板を切る」
「金槌で打ち付ける」
「スコップで土を掘り起こす」
などの作業を日常生活のなかで行うことは
ほとんどなくなってしまいました。
便利になったといえばそれまでですが、このような道具を使うことがなくても、
何事もワンタッチで全てが解決する時代になっています。
腕と肩に力をこめて、のこぎりで板を挽く、
金槌で釘を打つ、スコップで土をすくうなどは、
大人がそれらの道具と場所を準備・提供して、意図的にやらせない限り、
生活の中で経験する事ができないといって間違いありません。
「そんな道具を使わなくても既にできているものを買ってくれば、
生活できる時代なのだから、怪我をする危険があるようなことを
わざわざ経験させる必要はないのでは?」という人は多いかもしれません。
ただ、幼児期には、腕と肩を思い通りに動かす経験が必要なのです。
この経験をしなかった現代の子どもたちにどのような事が起きるかといえば、
転んだ時に手を突いて体をかばう事ができないという事があるそうです。
転んだ時に体をかばえないことから、転んだ時に歯を折ったり、
舌を噛んでしまったり、顔面を擦りむいたりして怪我を
してしまう子どもが増えているという事実があります。
全てに対してというわけではありませんが、こうした事を避けるためにも、
幼児期には腕と肩を一緒に動かして道具を使う経験が必要となるのです。
こうした事を避けるためににも、意図的にのこぎりや
金槌を私用する機会を提供しましょう。
使う前には、その正しい使い方を「して見せる」事が重要になります。
この種の運動の機会を得ると、幼児期の発達に必要な事なので、
子どもは「物づくり」に夢中になり専念します。
ただし、このようような機会は、大人が意図して準備・提供して
あげなければ子どもは得ることはできません。
小学校に就学する前に、大人は子どもに「読み、書き、計算」が
できているようにしたいと考えるようですが、
「折る、切る、貼る、縫う」ことを自由にできるようにしておくことのほうが
大切だと考えることもできるのではないでしょうか。
ワンタッチで何でもできる時代なのだから、
そんなことなんてできなくてもいいんじゃないの。
それよりも子どもの将来のためには、
幼児期に外国語や楽器を自由に操れるようにしてやるほうが
ためになるのではと考える大人は多いでしょう。
モンテッソーリは、
○子どもの知能は手を使わなくてもある水準まで達するのですが、
手を使う活動によってさらに高い水準に達し、自分の手を使う子どもはさらに強い性格を有する
○また、手を使って環境に働きかける機会をもたなければ、
子どもは幼稚な段階にとどまっている
○環境の特殊事情によって子どもが手を使えない場合には、
性格が極めて低い水準にとどまり、従順ではいられず、
積極的でなくなり、不精で陰気な性格になってしまう
○これに対して、自分の手で作業できた子どもは、
明瞭な発達と性格のたくましさを示します
このように言っています。
器用さを求めて手を使用するのではなく、随意筋を自分の意志どおりに
使えるようになっていくこの時期に、「折る、切る、貼る、縫う」のような
手をつかった活動を行って身につけていくその過程において、
脳の色々な部位がフル稼働する事で、モンテッソーリの言っているような
強い性格が育つという事が重要になります。
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